ゾーニングと動線計画

技術・サービス情報コーナー

食品工場の衛生管理ゾーンを分けると、原材料や包材などの入荷や製品の出荷などの行う場所で直接外部環境に接する「汚染区域」、原材料の保管や前処理作業を行う場所で、汚染の拡散や拡大防止を管理する「準汚染区域」。また、調理、加工場などの製造エリアとしての清潔度を確保しなければならない「準清潔区域」。そして、充填や包装など最終製品を扱いクリーン度が最も要求される「清潔区域」になります。そのために「人」「物」「空気」の動きによって汚染の流入・混入、拡散、交差汚染などがないように配慮したゾーニングと動線計画が重要となります。

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汚染区域の対策(受入室、出荷室)

入荷室や出荷室などは物品の搬出入に伴い、外部からの汚染(微生物、昆虫、埃等の異物など)に曝されやすいため、その流入や侵入をいかに防止するか、その遮断機能がポイントです。

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    ドックシェルターによる開口部の気密化

    ドックシェルターは、トラックと入出荷口との隙間を埋めるクッション性に優れた気密装置で、風雨や虫、ほこりの侵入を防ぐだけでなく、省エネルギーにも効果的です。車両の形状に合わせて、ヘッドが稼動するものや、サイドが稼動可能なものなどがあります。

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    エアーカーテン(シャッター連動)による汚染空気の遮断

    エアーカーテンはシャッター開放時に虫や塵、埃などの異物の侵入を防ぐ装置です。吸い込み口から飛翔虫を捕獲し、下部トレーから排出できるタイプもあります。

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    オーバースライダーによる汚染空気の遮断

    シャッターボックスが不要で、気密性が高く、耐風性能に優れており、防虫、防塵にも効果を発揮します。冷凍・冷蔵庫の前室などの用途に適用できる断熱タイプのものもあります。

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    高速シャッターによる汚染空気の遮断

    フォークリフト等の運搬作業では開口が大きく開き、搬出入も頻繁に行われるため、虫や汚染空気の流入が懸念されます。高速シャッターにすることで最短の時間で開閉し、汚染リスクを低減することができます。また、センサー感知により安全で作業効率の向上にも期待でき、多くの工場で採用されています。

準汚染区域の対策

準汚染区域は、外部から搬入された段ボールやドラム缶、袋詰め原材料などが汚染区域を経て持ち込まれるため、室内の汚染リスクも高く、清潔区域側へその汚染物質を拡散、拡大させてはならない衛生管理ゾーンです。

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    エアーカーテンによる汚染物質(異物、虫など)の遮断

    高速シャッターとエアーカーテンの組み合わせで、より虫の侵入をシャットアウトさせます。下方向吹きタイプと横方向タイプがります。

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    捕虫機による虫の除去

    準汚染区域では原材料の貯蔵や保管場所になるエリアが多く、特に虫がすみかをつくる可能性もあります。捕虫器を虫の侵入経路に沿って、計画的に配置し、確実に捕獲することが重要です。能力の大きい捕虫器の設置や台数を多めに設置することも効果的な対策です。

準清潔区域の対策

準清潔区域は、食品の下地処理や加工、加熱・冷却などの製造作業に適した清潔度が求められます。清潔環境を維持するため、清掃しやすい壁や床、衛生環境に配慮した内装ディテールなどの対策が必要です。

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    オートスライドドア

    作業上、出入りの多い開口部では、扉に直接手を触れずにセンサーで自動開閉するオートスライドドアが適しています。
    台車で製品を運搬する作業が多い場合は、作業効率の向上も図れます。

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    汚れにくく清掃しやすい内装

    下地処理や加熱室などは、熱水や蒸気の使用、加工時の残渣汚れなど、室内は厳しい環境にあり、そうした中で清潔さを維持していかなければなりません。特に清掃のしやすさやメンテナンス性、そして耐久性や機能性など、その室の特性や条件をしっかり組み込んだ計画が必要です。

清潔区域

清潔区域は、製品の最終工程であり最も高い清潔度が求められます。汚染区域からの入室にはサニテーション(衛生準備室)を通過しないと入室できなく、原材料などの物品も清潔区域に直接持ち込めない動線計画にする必要があります。また、汚染区域からの空気の流れを防ぐ陽圧化などの設備対策も重要です。

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    室内陽圧化による汚染空気の侵入防止

    清潔区域の給排気計画では給気量を排気量より高めに設定して、室内を陽圧化します。その陽圧を一定に保つため調整機構として微差圧ダンパーやパスダクトなどが使用されます。パスダクトには汚染側の空気が流入しないように逆流防止ダンパーを取り付ける必要があります。

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    清潔・衛生管理に配慮した内装・空調計画

    基本的には整理整頓しやすい室空間、塵や埃が溜まりにくく、清潔感が保てる内装ディテール、材料、清浄度の高い空気環境がもとめられます。また、清掃、洗浄、殺菌などの衛生管理にも配慮した内装、設備計画が重要です。

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    パスボックスによる物品搬入の前室化

    パスボックスは清浄度の高い室への物品の出し入れの時に利用される2重ドア付きの箱型ボックスです。扉の開口時にはインターロック(反対側の扉は閉鎖)によりボックス内を前室化し、汚染空気が清潔区域側に流入することを防ぎます。

サニテーション(衛生準備室)

人からの汚染リスクは①手などの汚れ、②外部から汚染物の持ち込み(衣類、靴底等)、②毛髪や衣類に付着した糸くずや異物等などあげられます。サニテーションは人からの汚染を無くすため、衛生管理を徹底的に、かつ効率よく確実に行うための衛生準備室です。

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    エアーシャワー

    作業着の着衣後の除塵として使用します。作業用途や通過対象人数や時間などによって、エアーシャワーの大きさや寸法、風の流れ(両吹き出し、片吹き出し、壁吸い込み、床吸い込み)、扉や壁材の使用などを選定します。

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    毛髪除去対策

    粘着ローラーによる毛髪・塵埃除去が一般的ですが、さらに吸引式装置を併用し、除塵の徹底を図る工場も増えています。

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    手洗い設備

    手洗い設備は水栓や器具などに触ることなく洗浄できることが基本です。手洗設備の中には洗浄剤、温水、温風などのすべてがセンサー感知により出るタイプのものもあります。

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    手指消毒器(自動ドア連動)

    手指消毒と自動ドアを連動させ、一定時間消毒を行わなければドアが開閉しないしくみになっています。衛生管理を確実にできる方法として、最近では多くの工場で採用されています。